京大の本庶先生がMD AndersonのDr. James Alisonと共に医学賞を受賞しました。おめでとうございます。化学賞では、Winter博士らが抗体作成法の開発で受賞しました。ヒトモノクローナル抗体の効率的開発技術なしに抗CTLA4、抗PD-1抗体といったものが癌治療薬として世に出ることもなかった訳で、いいコンビネーションの受賞となりました。北大での免疫学の講義をしていただいているDr. Sally Wardは過去にWinter研究室で活躍していた為、今回の授賞式にも出席されました。北大の学生にもいい刺激になれば、と思います。
小林個人的に言えば、本庶先生には出来れば抗体クラススイッチのメカニズムの解明について受賞して欲しかったです。サイエンスとしてこんなに面白い事がノーベル賞にならないなんて、と思ってしまうのは私だけでしょうか。大体、クラススイッチなしには特異性の高い抗体は出来ない訳で、抗体を使った治療薬はおろか、種痘をはじめとした多くのワクチンもあり得なかったはずです。
本庶先生は、受賞金を若手研究者のために基金を作るそうで基礎医学研究の重要性を説いて回っています。頭が下がります。日本ノーベル賞の受賞者は多くなりましたが、主な研究は10年、15年前に行われているわけです。一方で、その根幹となる研究費、科学論文総数は近年先進国の中で際立って下り続けています。資源のない日本が先進国として国力を維持するためには、科学技術とそれを支える高等教育が必要なわけですが、超高齢化社会と経済縮小を控えて、それどころではないといった感があります。思いきった政策転換が必要ですが、既得権益層に阻まれて、それもままならずに来ています。せめて現場の我々だけでも次世代にサイエンスの灯火を消さずに渡せるよう猛努力してくては、と思います。
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